日本で見掛けるどう見ても、ダメだろう案件をやめられない「日本の新規事業」

「これ、理屈はわからんでも無いけど、無理筋だよね」

"UW Architectural Commission, model of the new Business School building on the Seattle campus" by Wonderlane is licensed under CC BY 2.0

 

昔、関係者のほとんどが「これ、理屈はわからんでも無いけど、無理筋だよね」と思っていた、日本の電機業界がこぞって参加した新規事業に参加したことがあります。地上波放送がデジタル化する時期だったのでもう時効だと思いますが、敢えてそのもののプロジェクト名は書かないようにます。

 

取り敢えず、その事業は無理矢理フライしました。
そして私の知らない間に失速し、消えていきました。
そこにつぎ込まれた資金は、私の知っている限りでも数十億円に上がります。

 

似たような話がいくつもありますが、日本企業からスピンアウトした事業でうまくいった事例は数えるしか無いように思います。
その中でも比較的うまくフライして、未だに飛行を続けているものには関係者のほとんどが「この事業はニーズがある」と思っていたように思います。

 

どうしてほとんどの関係者が「無理筋」と思っている事業にお金が付くのか。一部の上層部には都合の良いストーリーがあって、それが希望的観測に裏付けされ、見たく無い不都合は勘案しない忖度が蔓延り、不都合な事実を出す人間を排除することで成り立っていたように思います。
この現象は、日本の組織ではよく見られる気がするのです。

 

銀行からお金が付く新規事業を見ても、「なぜこれがうまくいくと銀行は思ったのだろう」と、私は頭をひねるものものがかなりの割合あります。
これは帝国陸軍が東南アジアで繰り返した、「自分にとって都合の良いことしか前提にしない」精神が垣間見られるのです。
熱量はもちろん大事なのですが、「熱量だけで、周りを都合の良いことでしか見ていないのでは無いか?」と思わせることが散見されるとき、上手くいっていません。

 

30代はいくつもの大きなプロジェクトを担当させて貰いましたが、今の仕事に繋がるのは35歳の時にシステムズエンジニアとしての最後の仕事をさせていただいた案件でした。
このプロジェクトで求められたのは、とにかく「事業継続性を低コストで」という無理難題でした。ここで色々工夫して要求仕様に答えられたのが私のシステムズエンジニアとしての最後の仕事に対する密かな誇りでもあります。

 

それを最後に私は所謂セールスエンジニアに転職(会社は同じですが、私の気分は当にこれでした)します。それから10年、私はお客様にとって利があるとは思えない無理がある案件を推進強要され、それを直裁に批判したため、上司と対立します。
それがきっかけでその会社を去りますが、その上司だった人も日本を去ったように聞きました。その上司の後に尊敬している頭の切れる人が付いたのですが、その人も案件の内容の欺瞞性に気がついて一年で去ります。
その上司が来るとわかっていれば、もう一年その会社にいたかもしれません。事はもう遅かったのですが…。

 

あるお客様において、その会社で最後に担当した案件がそうでした。
非常にコストが厳しい案件で、結局あきらめたことを覚えています。
そのお客様で私が最後に担当した事業も、命は短かったのを覚えています。
そして同じ方が今回スピンアウトをしたと聞いて、少し思うところがあるのです。

 

「新規事業」が上手くいくのは確率が低いのは、常識でもあります。
しかしその常識があるので、関係者のほとんどの人が「上手くいくし、社会的な意義がある」と思えないものは、ダメなのでは無いでしょうか?

 

新規事業は「既存のお客様」に対して新しいものをぶつけるのが、王道です。ですが、他の同様のサービスとの厳密な比較でも優位性がお客様から明確に見えていなければ、上手くいかないでしょう。

 

同じ技術を新しい顧客にぶつけるのも、王道です。
これは同時期に担当していた任天堂さんが得意です。
任天堂さんには多くのことを学ばせていただきました。
任天堂さんは、知恵をコアコンピタンスとした会社です。

 

なんだか任天堂さん以外の「お会社」では、新規事業を会社の方針として実施しているだけで、本当はやりたくないのでは無いかと思うのです。
でも新規事業は熱量も必要なので、「やりたい人×社会的必要性×熱量」の大きさにもよる気がします。義務的にやっただけでは、その事業は終わりです。
他社のサービスが既に存在しているところに後から参入するなら、お客様に対して、どうしようもないくらいの明らかなメリットか、社会的な意義が無いとつらいでしょう。

 

その大きな視点が、日本企業には「後付け」にしか感じられない。
それが日本企業の新規事業に魅力が感じられない最大の原因かもしれません。